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2023. 06 / 18 建築のこと ]

建築探訪

仕事で静岡へ。

帰路、昨年竣工したばかりの「静岡市歴史博物館」へ立ち寄りました。

設計に際して行われた発掘調査で発見されたという戦国時代末期の道の遺構をそのまま建物内部に

取りこみ、その遺構を取り囲んで展示室に向かう動線は遺構への視点が移りかわってとても楽しい。

 

また、写真にもある曲面の展望ラウンジからは駿府公園やお堀を見渡せて、歴史博物館と聞いて

イメージするかたい雰囲気のない素敵な博物館でした。

なにより立地がいいです。駿府公園の脇ですから、歴史的な雰囲気を立地そのものが持っている。

そのことが建物への説得力を必然的に高めていました。

 

 

 

2023. 03 / 03 建築のこと ]

古民家改装あれこれ 続

古民家の魅力は、懐かしさや使いこまれた暮らしの風情、今の建物にはない素材感。

時間を経たものが帯びる魅力です。

それを生かしながら、クライアントの暮らし方に沿ってどうやって機能性と快適性を持たせるかと

いうのが設計で考えることです。

 

なんといっても古民家は暑くて寒いわけです。いくら惚れ込んだ建物でも限度はあるわけで、ちゃんと

快適なレベルまでには引き上げたい。北鎌倉の舎でも、断熱材はすべて新たに入れ直しています。

ここをおろそかにしないことが大事です。

デザイン面にばかり注力して、この先、何年も凍えて暮らすために多額の改装費をかけたい人はいないと

思います。

とはいえ、近年の資材高騰でこういった基本的な快適性に必要なコストが全体の工事費割合に対して、

じわじわと膨らんできているのは頭が痛いところです。。。

 

クライアントが建物を購入されて最初にすることは、ご要望をお聞きすること。

どんな風に暮らしたいか、イメージなどざっくばらんにお聞きする。もちろん予算面も。

それを基に、現在の建物の調査を行います。おそらく調査には時間をかけている事務所だと思います。

築70年ともなれば、傷んでいないわけがありません。特に柱梁の腐食状況と、雨漏りの有無は工事前に

知っておきたい点です。大抵は、調査の段階で工務店さんに立会してもらいながら進めます。

部分的に壁を壊したり、床に穴をあけたりして可能な限り目視調査を行うんです。

工務店の助けがないとできない作業なので、一緒に共同しています。

これは、着工後のコスト増加を未然に防ぐためで、クライアントにはそのための時間をもらうように

しています。これもおろそかにできない部分。それでも腐食箇所が調査箇所以外からでてきましたが。。。

 

改装への要望をお聞きして調査が終わったら、今度は人がいない時に建物を一人で見に行きます。

そうすると不思議と自然と家の在り方の糸口がつかめてきます。頭の中には、調査データとクライアント

の要望が上書きされているので、不思議なことにプランや改装アイデアがまた自然と生まれてくる。

事務所に戻り図面を書いて見る。悩んだらまた建物を見に行く。時には鍵を一定期間預かって自由に

見て回らせてもらう。これを何度か繰り返して改装案を決めてクライアントに見て頂く。

私の場合、改装計画は机上であまり設計してないかもしれません。大抵現地。

 

何度も現地へいくと、敷地を流れる風の向きにも気づく。時間ごとの日照具合も把握できる。

隣家の雰囲気や周辺環境もわかってくる。ちょっと時間はかかってしまうけれど無駄にはならない

大切なプロセスだと思っています。こうして計画は進んで行きます。

 

毎回、新築でも改装計画でも話し出せば、一冊の本くらいは簡単にできてしまうな。と思います。

家づくりには本当に様々な局面があって一つとして同じ計画はないわけです。

この北鎌倉の舎もまた書ききれないプロセスを経て無事に竣工しました。

 

最後に、築年数を経た建物の改装はどこか、関わった人たちと共に作るような感覚が強くなるのですが、

北鎌倉の舎の設計期間中に夏を迎え、庭の草が生い茂ってしまったことがあります。

着工前に工務店さんに手を入れてもらわなければと思っていたら、また現地に行くときれいに刈られて

います。聞けばクライアントご夫婦が刈ってくださったとのこと、工事前から愛着を生んでいる家を

前にして自身も気を引き締め直したことがあります。

物づくりの醍醐味を味わえるのも、やはりこうした改装の面白さだと思います。

 

 

 

 

 

 

 

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