
今回は長野県の北安曇で出会った「蔵」の話を書いてみようと思います。
出かけたのがちょっと前になりましたが、いろいろ調べている間に時間がたってしまいました。
Tsumugisha|紡ぎ舎
長野県の白馬村へトレッキングに時折出かけています。
秋を求めて向かったのは去年の9月の下旬でしたが、道中立ち寄った善光寺では30度を超える残暑で夏でした。美味しいカレーも食べて周辺散策するものの暑さに負けて、早々に切り上げて白馬へ向かいました。向かった先は、北安曇郡小谷村にある「紡ぎ舎」さんです。夕暮れ前にたどり着きました。
紡ぎ舎さんはHPにある一文が素敵で以前から一度訪れてみたかったお店です。
「もの」と「プロセス」を大切にされていていて、まずそのものが「美」や「機能」といった絶対的な領域に踏み込めているか?踏み込めいるものには、自ずとものを生み出すプロセスに愛情や苦労が積み重なっていて、さらに魅力を増す。そういった「もの」を扱いたい。そのスタンスがとても素敵です。
お店に並ぶものが、ちゃんと作り手に会って選定されるという背景があるのはとても楽しく誠実さを感じました。
Warehouse| 土蔵
お店は水質ランキングで日本一になったことがある姫川を渡って僅かに道を登っていった先にあります。敷地から姫川を見下ろすことができて、川風も吹いてくる気持ちのいい場所です。
そして素敵なお店の雰囲気の他に、もう一つ紡ぎ舎さんへ行ってみたかった理由があります。
建築探訪の折、その土地の蔵や納屋も見ています。といっても当然私有地。いいものがあっても当然勝手に見学できません。
その点、紡ぎ舎さんは築150年の蔵を店舗にされているので見て回れます。そしてこの蔵があまり見たことのない形状。お店と共に建物も見てみたかったんです。

オーナーさんに伺うと解体される既の所で見つけられたという運命的な出会いの建物だったそうで、自ら手を入れて店舗にされたそうです。センスのいい空間になっていて、蔵特有の閉塞感も気になりません。むしろ包まれる安心感を感じました。
紡ぎ舎さんの蔵は外周全体に独立柱が並んでいます。これがあまり見たことのない作りです。柱は屋根を支えているのですが、蔵は延焼から所蔵物を守るためにあるので、柱を無防備に現わしたりしないと思っていたので興味が湧きました。
雪が多い土地ですから軒が深く、その軒の荷重を支えるためにこうなっているようにも思いますが、腕木を設けて漆喰で塗りまわしても問題はなく、その方が雪による柱の根腐れの心配がないのに、なぜこの方法を取ったのか。雪囲い用かと思ってもその跡もない。農作物を干すのに使ったのでしょうか。干し柿でも吊るすにはよさげですが・・・ちょっとよくわかりません。
車で20分ほどにある「白馬村青鬼伝統的建造物群保存地区」にも同じようなものはなく、地域性のものかもわからない。帰宅後ちょこちょこと調べてはみたものの結局類似の蔵はなく、詳しい方いればぜひ教えて頂きたいです。
蔵の面白さは日本建築の柱と梁で作られることとちがい、厚い壁があり窓が小さく長方形のシンプルな間取りで屋根は妻の置き屋根ということ。日本伝統建築の軽さと対極にある重厚さ、そして微妙に地域性があるところです。栃木県には大谷石で作られた大谷石蔵というものがあったり、本来白い漆喰を黒くする黒漆喰というものがあったりと細かく見ると違いがあり、建築マニアからすると面白い点です。
さて、お店の2階へ上がってみてびっくりしたのは小屋組み。最近作ったんですか?というくらいに柱も梁も真新しい。でも築150年。どうしてこんなに状態がよいのか。よほど調湿がうまくいっていて、紫外線にもさらされなかったのでしょう。内も外も面白い蔵です。
地棟木には作られた年号(皇紀表記だそうです)と棟梁の銘があり、さらに製材した人の銘も記されているそうです。作り手の名が刻まれた蔵は紡ぎ舎さんのスタンスに合っていて、こんなところも運命的な出会いなのだなと思いました。

蔵の入り口は「入る」感覚を生み出します。

地棟木の棟梁の銘と製材した人の銘

綺麗な小屋組みの2階