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2021. 09 / 18 建築のこと ]

家具の風合い

アイランドキッチンや作り付けの家具は、クライアントがすでに持っているテーブルやチェストに

合わせてお互いに良く馴染むように、素材は概ね一緒ですが色味は都度調整して決めています。

 

「家具はしっとりとかっこよく。どっしりとしていながら重すぎず。

空間に馴染みながらもほどよいアクセントのような存在感がほしいものです。」

 

素材としてラワン材を使い続けていますが、この点でラワン材の主張しずぎないところがいいです。

なんかこう大人な素材だと思っています。

テーブルなどの置き家具のちゃんと引き立て役になってくれる。さらに竣工時から落ち着いた風合い

に仕上げることで、古道具などに馴染みがいい点もいいところです。

昔ほどにはコスト面では高いものになりましたが、それでもナラ材などにくらべれば安価。

 

使いようによって、とてもきれいな風合いを出してくれるので、こちらも腕の見せ所とばかりに

塗装の試し塗りをしてから塗装屋さんに依頼する。うまくいった時は静かに心の内でグッとくる。

そんなちょっと挑戦心をくすぐられるような遊び心もある素材で楽しいです。

 

もちろん、事前にラワン材の特性や風合いなどはクライアントにご説明して承諾を得ていますが、

ほとんどの計画で使っているので、むしろみなさん積極的にOKして頂けます。

私自身が古道具や古いのものが好きなので、自ずと設計するものに現れてしまいますが、

依頼頂くクライアントの皆さんも、ちょっと古いもの好きという点でみなさん共通しているように

感じています。

ラワンの家具などの風合いを生かして、新しいものと古いものが馴染むちょうどいい空間のバランス。

そのようなものがデザインできるといいなと思っています。

 

 

 

 

2021. 09 / 14 建築のこと ]

メタボリズムの終焉

「中銀カプセルタワービル」1972年竣工のマンション。来年での解体が決まったということで

先日寄り道をして、これが見納めかと目に焼き付けてきました。

 

カプセルホテルの生みの親である建築家・黒川紀章さんの代表作。

幼い頃に見た時の違和感・異物感。特に丸窓の集合体には恐怖さえ覚えました。(今でも怖い...)

しかし、あらためてしげしげと見ているとすごい存在感で迫ってきます。

 

建築の見方は沢山ありますが、竣工後も設計者のエネルギーが消えず、逆に発散し続ける建築という

点でいうと、まさに設計者の執念のようなモノを感じずにはいられない建物です。

端的にメタボリズムという考え方を表出できた稀有な存在です。

見ていると、未来を想像することが今よりも明るくて、ポジティブだったんだなぁと思うんです。

SF的な世界観に近い建築ですから、小松崎茂(箱絵アーティスト)が描くような世界の建物で、

よく作ったなと感心してしまいます。

 

「増殖」「新陳代謝」というコンセプトを掲げた建築が増殖から減少へ。新陳代謝から都市の老朽化へ。

と50年を経て変化した時代に幕を下ろすのは象徴的だと思います。

70年代にあったようなワクワクする未来を失ってしまったんだなとちょっと寂しさすら感じて

しまいました。気軽にちょっと見て行こうと立ち寄ったのに、いろいろ考えさせられるのは、

この建築がいかに時代性をまとっていたかの証なんだろうなと感じ入ってしまいました。

 

ただ切ない話ばかりではないようです。

カプセルのいくつかは切り離されて展示されたり、第二の人生を歩むようですから、

それはそれで面白そうです。いつかどこかでカプセル内部を体験してみたいものです。

 

建物を見るのに足元もいいですが、対面の歩道橋からは上部全景が見れてお勧めです。

 

 

 

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