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2024. 11 / 25 建築のこと ]

kugayama house | 久我山の家

 

Harf renovation |ハーフリノベーション

 

マンションリノベーションの「久我山の家」の工事が進んでいます。

約70㎡のマンションの約半分を解体しています。玄関側にある寝室や旧子供部屋の2部屋やトイレ・一度リフォームしているユニットバスは解体せず、天井と壁のクロスの張替えにとどめることで、経済的な計画を提案をしています。一方で見ての通りLDKとワークスペースのメインとなる空間は、スケルトンにまで解体して作り直すことで、しっかりと新しい空間に変えてゆきます。半分改装しますから、ハーフリノベーションですね。

 

工事規模を小さくすると工事コストメリットもありますが、工期短縮による引っ越しや間借りの賃貸費なども抑えられるので全体として大きなメリットがありますから、マンションのリノベーションにはいい方法だと思います。

前述のように、今回は数年前にユニットバスも入れ替えていたので浴室は工事から完全に除外していますから、大きくコストを下げられています。

 

Japanese taste |日本的な空間

 

クライアントであるご夫婦は、電気設備設計が仕事のご主人と茶道や日本文化のフリーランスエディターをしている奥様で、自ずと日本的な空間を計画となりました。障子や柱といったデザイン要素を入れながら、すっきりとした当事務所らしい空間づくりを目指しています。

 

Material|絨毯

 

以前も書きましたが、素材として今回取り組んでいるのが全面絨毯敷きの床です。

もともとが絨毯で改装後も絨毯が希望だったのですが、ずっと絨毯敷きの空間を設計したかったので嬉々として取り組みました。落ち着いた空間を作り出すのにもってこいの素材なのですが、とくに掃除や衛生面で避けられがちです。今までにも提案してきましたが、なかなか採用となりませんでしたので今回の絨毯敷きのご希望は嬉しいもので、フローリングとは違う雰囲気を作り出したいと考えました。

 

住空間ではフローリングが全盛ですが、絨毯は歩行時の足へのあたりも柔らかいので空間の印象がとても変わります。視覚だけでない触覚として空間に影響が大きいのが絨毯だなっと感じています。もちろん遮音性の高い絨毯は空間の音の反射も低減できますから、やはり落ち着いた空間を作り出すにはよい素材だと思います。

耐久性も決して悪くはありません。丁寧に暮らしていらしたというのはありますが、今回の改装でも30年経っていた既存の絨毯の状態も極端には悪くはありませんでした。摩耗性などの耐久性能をメーカーは各製品に示しているので、その点に注意しながら選ぶことも可能です。

 

日本的な空間を設計する際はまず使う材料を決めてから始めることにしています。あまり材種を増やさずに設計した方が、まとまりのあるシンプルな空間に仕立てやすく、空間の色や雰囲気も最初にイメージしてから設計を行います。日本的な空間は素材からアプローチした方がうまくいきます。

 

年内には工事が終わりますので短期間の工事となります。新築の住宅などとは全く異なるスピード感が求められるので緊張感があり、こういった工事もまたやりがいがあります。

 

 

 

 

 

 

 

2024. 09 / 03 建築のこと ]

Living environment|生活環境

 

Living environment|生活環境

 

今回は自宅の生活環境について書いてみたいと思います。

自宅兼事務所が世田谷区の外れにあり、一戸建てで生活しています。都市部の生活なのですが少々特殊な周辺環境なので仕事上もいい経験になっています。という話です。

 

上の写真の中央部に割と大きな建物(中庭がある)があり、その右手に住宅が建ち並ぶ一角に住んでいます。見ての通り周辺は緑地に囲まれており、住宅部右手も大きなお寺で墓地が拡がるため、タクシーの運転手さんがこの一角に来ると「ここは一体なんですか?」と不思議がるほどに木々の多いエリアです。

 

周辺の森はもう何十年も前からの物で、地盤の悪さからマンション開発がされずに残った言われています。地面師も寄り付かないでしょうかw

住み始めた10年ほど前は現在と違ってまったく管理されず、うっそうとした荒れた森で、ちょっと怖い雰囲気すらありました。案の定、2018年の台風24号により森全域で倒木が発生し、我が家も危うく直撃という恐怖を味わいました。行政指導が入ったのか、長年放置していた某大手不動産会社も重い腰を上げて、樹木調査を行ったうえで敷地外周部の危険樹木を伐採しうっそうとした森から雑木林へと変わり、風通しがよくなりました。

その後住民の嘆願などもあり、昨年世田谷区が買い上げて公園にすることが決まりました。

 

倒木時の写真。奥の黒っぽい建物が自宅。倒れる向きが違ったら・・・

 

Temperature|温度環境の変化

 

暮らし始めて最初の夏に、家の周辺と他では温度が違うことに気がつきました。1~2度は森によって温度が低いんです。隣家の方々も同じことを感じていました。出先から帰ってくると森に差し掛かった瞬間から気温変化が判ります。これくらいの面積で森があり土があるということで気温変化が起こるのだとわかり、いい環境的な経験になりました。

一方で梅雨時期の湿度は高く、植えてもいないシダ植物が敷地に生えてきます。森特有の湿度をともなった重い空気はやはりうっとおしく、また特有の虫も多くて困りものでした。ただ、前述の倒木による伐採整備後には、この湿度環境が劇的に変わりました。森から雑木林へと変わったことで風が抜けるようになり、快適になりました。

以前はジメジメとした土も、日が差し込むようになり水はけがよくなりました。虫たちも大幅に減りました。

うっそうとしていた頃には見えなくなっていた桜の大木も、整備後には全景が見えるようになり春には道を行きかう人も楽しめるようになりました。

伐採整備の計画当初は、あらゆる木々が切られて景観が変わることを危惧しましたが、外周部の木々のみ整備されて安全性は確保されつつ、中心部の大木が残ることでむしろ景観はよくなりました。

間伐など人の手が入らなくなった森のデメリットなどは聞いたことがありましたが、この経験で自然を整備することの大切さのようなことを体験的に学習しました。

 

improvement|環境改善

 

この体験から、もっと地面や環境面から考えて設計していきたいと思うようになりました。どんなにいい空間を作ってもいい環境でないと生きてこないんじゃないかということです。

北鎌倉の谷あいで改装の設計を手掛けた「北鎌倉の舎」ではまさにこの経験を生かして「環境改善」に取り組みました。実践となった訳です。

 

鎌倉特有の谷あいということもあり敷地には水の流れが集中してきます。ですが水はけは悪く、雨が降ると庭に水たまりが大きくできてしまい。敷地内の側溝もジメジメとしていて全体的に湿度も高く感じていました。そこでお施主さんとも相談し、環境改善に取り組んでいる造園家に相談しました。

・敷地内の水はけをよくしたい

・可能であれば湿度を下げられないか

・植栽を植えるにあたり、風道を優先して計画してほしい

概ねこんな相談をしました。

 

すでに実績のある方でしたので心強く、本体工事に引き続いて敷地全体の環境改善の工事が始まりました。使うものは、砕石と枯葉、枯れ枝、炭といった自然にあるもので、土管といった人工物は使いません。できるだけ自然な状況に戻すというのが基本的な考え方なので、無理矢理に水抜きをするようなことではありません。滞留していた地面下の水を「流れを再生し、浸透を促す」とイメージしてもらえるとわかりやすいかもしれません。

さて、工事後どうなったと言うと改善できたんです。うまくいったんです。湿度は体現できる形で下がりました。重たい空気だったものから変わってくれました。

地面もジメジメから水はけのよい状況へと変わりました。ちなみに、敷地に幾度となく通っている私自身も手伝っていた改善工事の終盤には、空気感が変わったことを感じ取っていました。

これがホントなんです。ウソみたいな話ですが効果はすぐに感じ取れました。

 

環境改善工事風景。外周部を掘り起こしてから、枝や枯葉、土、灰で詰めているところ。

 

実践ができて。また効果も体現できたのは本当に大きな収穫でした。設計のスタンスに環境面への視点が加えることができて、自然との調和というテーマに当事務所として新たな実績ができました。今後もこの視点を引き続き持ちながら、よりよい空間づくりを目指します。

 

 

 

 

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