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2019. 10 / 08 日々の暮らし ]

整理・収納

「上座の家」のお施主さんに驚いたのは、持っているモノの少なさだった。

設計する時は住まいに伺って、モノの量、必要な収納量を教えて頂くのですが、その量が少なかった。

3人家族の一般的な量からすると1/3くらいという感覚でした。

 

”収納はここです”と言って見せて頂いた押入れには半分ほどに荷物があり、あとは空いていた。

本はお持ちだけれど、モノを増やさないのはご夫婦の考え方で、最近では小学生の娘さんにも

引き継がれていて、その小さなミニマリストぶりのエピソードはとても微笑ましくてかわいい。

 

上の写真は造作したキッチンの引出しで見事な整理っぷりが伺えます。

下はキッチン。こちらもスッキリしています。

別に撮影のために片付けているわけでなく。いつもこの状態です。

 

 

 

この家で特徴的なのは、洗面所と一体になって収納・クローゼットが設けられていて、

図面の下が浴室。くの字部がその洗面所+収納・クローゼット。ロールスクリーン(点線部分)を

間仕切りにして区分けができるようになっています。

 

浴室からの湿気を心配しましたが問題はなく。出来上がってみるとその便利さに気づかされました。

要望されたのは奥さんで、こうしておくと着替えにも、洗濯後の収納にも便利で楽です。

わずかな動線で片付けができてしまうのは生活の助けになりますから、

プランを工夫する大切さがよくわかる事例だと思います。

 

奥さんは、その生活ぶりを見た方から片付けの方法や、整理の極意などを教えてほしいと

言われることが多く。乞われてアドバイスをしている内に今では”整理収納アドバイザー”として

仕事にされ活躍しています。

ご主人も同様に生活への視点がとても確かでしっかりと持っている方なので、

いつ伺ってもその生活ぶりに、我が事務所ももっとスッキリさせたいなと思いつつ帰路につきます。

 

奥さんのHPinstagram

 

もう一つの特徴は、いわゆる注文住宅と言われる建物の工事費よりも安い点があります。

それは、収納に対する床面積を減らせたことや収納に対する建具などの部材を減らせていることが

要因の一つとしてありますが、一番は生活への視点がハッキリとしていることで、無駄な要素が

この家にはないのです。

家自体も施主の考えを反映して、必要なものはしっかりと残しながら無駄をなくす工夫をしています。

 

ミニマルな空間というとガランとした箱の家で、具体的な生活などは無視しがちな家になりがちですが、

ここではその逆のことをしています。生活の視点を掘り下げることで無駄をなくし、コストカットを

するような手法です。それでも浴室はユニットバスではありませんし、リビングの開口は木製建具で

趣があります。

 

実際、工事の見積金額を前にしてお施主さんと木製建具は死守しましょう。と話して他で予算調整を

しました。ポリシーは守らないと流されるものですから、そこは必死です。

ただ、かけた熱量はちゃんと返してくれるのが建築のよいところだと思います。すべては最初から

こうなる予定でしたという感じで空間があります。それはきっととても大切なことだと思っています。

外壁の焼杉も枯れ始めて、これからの上座の家もまた楽しみです。

 

洗面所と浴室を見る。

 

収納・クローゼット空間。

左手の梯子を上ると奥さんの小さな篭り部屋になっている。

カーテンで収納内は見えないようにしています。

 

works 上座の家

 

 

2019. 10 / 04 建築のこと ]

発想のメソッド

「茶の間」っていい言葉だなと思います。お茶を飲む暮らしの空間という表現が素敵です。

畳敷きに、ちゃぶ台、タンスが並び。縁側を介して庭がある。古き日本の暮らし。

言葉から日常の「風景」が想像できるようで、いい言葉です。

 

設計者にはそれぞれ発想のメソッドのようなものがあると思います。

私の場合は、この「風景」というものを思い描きながら建築を形作っていきます。

写真の食堂に、ご夫婦が楽しそうに会話をしながら食事をしているのを想像してみてください。

低めの照明は円卓をすっぽりと包むように照らしてくれますし、

低い天井は囲われる安心感があります。そして、この食堂にはTVもないのでゆったりと

静かな「風景」と「時間」作ってくれます。

 

設計の要望以外にも、暮らしの様々なことを聞きながら設計にあたりますが、

何のためにしているかというと、お施主さんのことを「知らない」と風景の中にお施主さんが

登場しない。。。ためです。

一定のリアリティのようなものがつかめないと、いくら想像しても空振りになってしまいます。

 

専門学校を卒業する時に忘れられない言葉をかけてくれた先生がいます。

「設計とは一つの小説を書きあげるくらいの想像力が必要だ、卒業にあたりこれから建築の

世界でやっていける自信のない者は去れ、中途半端で続くものではない」と。

「おめでとう」ではなく。「去れ」と言った言葉は「小説を書きあげるくらい~」という

言葉とともに心に残りました。

 

建築の設計はストーリーがあって生まれてくるものです。

よいストーリーが、いい空間を生み出すのは経験上確かなことです。

とはいえ、できた家は饒舌なものでなく、寡黙な静けさに包まれているようなものになれば

いいと思います。

 

 

 

 

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