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2021. 06 / 03 建築のこと ]

64年物の梁

ワインで65年物というとヴィンテージだから、築65年以上経っているこの家の梁もそうして見ると

なかなかのものである気がしてくる。地震に耐え、風にも耐えてきた。

そこには時間を経ないと生まれようのない雰囲気があって、改装の面白さはこうしたモノが持つ

時間の中に新しいデザインという時間を対比させ、調和させることだと思う。

 

古民家改装というジャンルになる計画には、よく対比の要素が強いものが多いけれど、

一番重要なのは新旧の調和で、同じデザインの言語でまとめられるかをとても意識している。

施主もまた古民家を強調した改装計画ではないものを求めて依頼して頂いているので、

形になってきた現場を見て回る度に、そのバランスを一つ一つを確認している。

 

さらに、今回とくに意識したのは空間の“やわらかさ”で、取り込む光や壁の印象からやわらかさを

感じる場所にしたいと思っています。それは施主の人柄や趣味から感じたことで、

住まい手の人となりを設計者の感性や共感によって空間へと転化したいと思っています。

 

ウッドショックの影響もあってちょっと遅れ気味ですが、あと二山くらい越えれば竣工が

見えてきます。

 

 

 

2021. 05 / 29 道具 ]

道具 № 4 腕時計

― 静かなデザイン ―

 

とにかくシンプルで時刻の読みやすい。原点のような腕時計をずっと探していました。

ある時、通称「国鉄ホーマー」と呼ばれる国鉄時代に職員に支給されていたシチズンのホーマーを

知ってほしくなりました。

不要な装飾はなく文字が浮き上がるように見えて視認性抜群。

これ以上はなかなか引くことのできないデザインにはむしろホッとします。

「そう、これでいい」と思える一品。

 

もちろん買ったものは中古品。民営化へと移行する後期のものでクォーツです。

裏ぶたに官給品らしく「昭和60年 天鉄」の刻印があります。なんだかちょっと懐かしい。

 

勝手にこういうシンプルなデザインを「静かなデザイン」と呼んでいます。

これ見よがしな主張してくるデザインがなく、生活のシーンに馴染みやすくて、

静かに人の心をホっとさせるようなもの。

昔からの定番と言われるものには、この要素があるように感じます。

長く愛されるためには、一時のデザイン的主張は不要で、飽きの来ないふつうのデザインが

よく考えられていることが必要ですが、この時計にはなんだかそのすべてが詰まっているように

感じています。

 

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