2022. 03 / 09 [ 日々の暮らし ]
真鍮
真鍮好きになった時のことをよく覚えています。
大学時代にアルバイト先の洋風居酒屋に真鍮(メッキ)製の什器があり、アルバイトの初日は開店までの
時間にピカールでの掃除を任されました。まあ、よくあるとりあえず掃除しとけ的な状況です。
アルバイト初日で緊張していたこともあるんだと思いますが、その真鍮色としかいえない色味と、
経年で細かな傷がついて鈍く光ることでどこか柔らかさを感じさせるその風合いに惹かれたのをよく覚え
ています。
元素記号でいえば、銅と亜鉛の合金に魅せられたわけですが、実際にはそれぞれの比率によって色合いも
変わり、耐食性や強度も異なります。銅が増えれば強度・耐食性が増し、亜鉛が増えると成形のしやすさ
が生まれます。配合によって風合いが変わる点は、なかなか味わいのある素材に思えます。
建築で使われるのは特に耐食性を考慮するので、銅の比率が高くわずかに赤みが強くなることが多いよう
です。まずウチの事務所でもっともよく真鍮製としているのはドアノブやハンドルです。
木製の玄関ドアと相性も良く、金属でありながら温かみがあり手に触れる箇所にも使いやすい。
そしてなにより経年変化が楽しめます。耐食の過程で劣化と感じないような深みが出る金属はほとんど
ないと思いますので、真鍮の一番の魅力はその点だと思います。
他にも照明器具や引手、タオル掛けなどでアクセントとしてよく使います。
金属でありながらも、どこかやわらかな雰囲気をまとうので積極的に使っています。
銅製の照明器具も使いますが、こちらは手でさわるとしばらくして錆(緑青)がでてしまうので注意が
必要で、電球交換後はきれいにふき取る必要があったりします。真鍮にそういう欠点はありません。
難点と言えばアルミに比べると高価なことですが、部分的な使い方が主ですからそこまでの欠点にはなら
ずに重宝しています。
ステンレスやアルミ板の鏡のようなピカピカしたものは苦手なんですが、真鍮のピカピカさは許せます。
建築における金属では、もっとも大らかな存在はきっと真鍮といえるんじゃないかと思っています。